エンジニアは最初の会社を1年でやめるべきなのか
先日、Qiitaの人気のある記事か何かで、エンジニアは最初の会社を1年程度で辞めた方がよい理由 - Qiita(以降、元記事Aとする)というものを読んだ。
エンジニア1年目の自分としてはなかなかに思うところがあったのだが、その後、ホワイトIT企業のブログで、エンジニアが最初の会社を1年で辞める問題 - 株式会社アクシア(以降、元記事Bとする)という記事がはてブの人気エントリーに上がっていて、こちらも読んだ。
この論争(?)に勝手ながら思うところを書いてみる。 結論としては、「1年でやめて転職できるくらい自己研鑽すべきだが、やめるべきではない」となる。至ってシンプルで当たり前なことだけれど…。
最初の会社は1年でやめるべきではないのが一般論
まず元記事Aがキャッチーなのは、「3年は続けよ」とかいう 一般論 があるからだ。また、エンジニア採用は未経験歓迎が多く、最初の会社にある程度「育ててもらう」ため、それに対して「恩を返すべき」「給料をもらいながら学ばせてもらうのだから、やめるのは常識的にあり得ないだろう」といった考え方が 一般的 だと思われるためだ。
そのことに対して あえて逆のことをいう というのはキャッチコピーとしては 使い古された手法 であるが、それでもまあ「なんでそういうんだろう」という気持ちにはなるので、 効果的 である。 信長が本能寺で死ななかったら という歴史のIFストーリーや、 ダイエットで食事制限はすべきでない という見出しが気になってしまうのと同じである。
給料の大幅アップにつながるのはたぶん本当
特に、IT業務未経験の状態で入社すると、そんなに 高度なことが求められていない ので、その対価がある程度のところに抑えられるのは当然と言える。
エンジニアスキルLv1(IT業務経験なし)の状態から、Lv5くらい(例えば開発エンジニアならJava/インフラエンジニアならLinux操作が基礎レベルまで習熟し、業務で使ったとか)まででも上がればもはや 経験者というステージ で転職活動をすることになるので、 給与は上がって当然 である。 選考時、アピール次第では、実際に経験した業務がどんなにかつまらないものであったとしても ぐんと上がる だろう。
というのも、元記事Bにもあったが、未経験採用からスタートしているエンジニアのレベルは正直そんなに高くない。いや、未経験かどうかはともかく、そこそこ大きな現場で働いている身として周りを見回しても、 本当にレベルの高いエンジニアというのはそんなに多くない 印象である。だから、ある程度のスキルがあれば成り立つ現場は多い。全くの未経験者を採用するのは元記事Bにあった通りリスクも高いので、ある程度のスキルがあるエンジニアであれば 経験者として少し単価を上げて採用する 企業は多くなる。
そもそも、SESとかの世界ではいわゆるn次請けという、多重請負が行われ、 人件費の無駄な搾取が横行 しているので、その無駄を省くようにちょっとした経験者を雇うことは可能なはず。多重請負をやめれば、いくらか高い給与を提示して採用しても おつり が用意できる。そのため、エンジニアとしては、転職するだけで年収100万くらいのUPが見込めることになる。
このように、一度の転職で大幅な給与改善の可能性があると知った上で、最終的にそれを上回る昇給をしてくれる会社に就職できれば問題ないのだが、なかなかそうはいかない。で、やめるべき、転職すべきという話になりがちなのだろう。
人脈の広がり云々はあまり関係ない
人脈は果たして転職して作っていくものだろうか。そういう人もいるだろうが、同じ会社にずっといることでより強固で有益なものができることも多いのではないか。いや、元記事Aはそういう 人脈の本質 は特にとらえていない 。むしろ 早くレベルの高い大企業に入るべき だというだけである。
この元記事Aを読んで、むしろ僕がハッとさせられたのは、果たして自分はこの1年で どのくらいスキルアップできているか 、という点である。 幸いにも、僕は現場に恵まれていて、レベルもかなり上がってきていると思う。けれども、これからすぐに転職活動をしたとして、年収大幅UPの見込めるような アピール は果たしてできるだろうか。第三者を客観的に納得させられるほどの 根拠材料 はあるだろうか。
僕はインフラエンジニアなので、例えばGitHubにソースコードをアップロードして自分のポートフォリオを作成するのは正直難しい。開発者は自分のプロダクトがあるのかもしれないが、インフラエンジニアはどうすればいいだろう。何をしておけばこの先の年収アップが見込みやすいだろう。
元記事Aに「転職ドラフト」というサービスが紹介されていて、見に行ったが、多少参考になるような、ならないような難しいところであった。ただ、目指すべき一つの姿として、ああいったサービスに登録しても遜色ないようなスキルを身につけるべきだと知ることができた。そういう意味でこの記事を読んでよかったと思う。のほほんと過ごす時間も必要だけれど、前に進むためにもっと勉強しなければ。
エンジニアが辞めていかない会社となるには
これは一介のエンジニアが考えるべきことではないと思われるかもしれないが、僕は そんなことはない と思っている。前職(教職)では優秀な人材、生徒にとって必要な先生ほどやめていったし、それによって自分もだいぶ大変な目に遭った。そして学校全体が疲弊していったように思う。 少し脱線するようだが、会社というのは人の集団である。立場の違いはあれど、働く人が働きやすい会社にするためには、働く人も、雇う人も、 互いのため になる行動をすることが必要だ。しかしその意識が欠けている人が多いと思う。 雇う雇われる人々の間にあるものは雇用関係であり、指示をするされるという関係ではあるけれども、それは決して 上下関係ではない 形であるべきだ。「 会社のため 」とは 恩という感情 のように思われがちだが、実はそのような わかりやすくも難解で曖昧な概念 ではなくて、自分と同僚のために必要な目的を表す、 論理的でデジタルな言葉 だと僕は思う。すなわち、気持ちの問題ではなく、自他の利益に直結するからこそ、「 会社のため 」を考えて行動する必要がある。
だからこそ、僕ら労働者は雇用者に対して 前向きに 提案したり、相談したりすべきであるし、雇用者は労働者に対してそういう 門戸を開いておく べきだと思う。そしてそれは、互いに利己的にならないようにすることが大切だ。
さて、では労働者は、自分の権利として主張できるはずなのに、 会社が対応不能 なことに遭遇したらどうすべきだろうか。 つまり、自分のレベルが上がりすぎて、会社がそれ相応の案件を見つけられなかったり、それ相応のお金を提示できなかったりするときは、どうするべきだろう。
それは、それこそ 転職するタイミング ではないだろうか。
最初の1年で会社をやめたくなるくらいレベルの高いエンジニアを目指すべき
エンジニアという技術職は、自分の 努力 で勤続年数とはある程度関係なく 給与アップの可能性がある 仕事である。 だから、最初の1年で、所属する会社が 対応しきれないくらいのレベルアップ をして、会社にそれ相応の 対応をしてもらう のが理想形ではないか。 本当にびっくりするくらいレベルアップしても、会社が対応できないのであればそれまでだが、そこを変えていけることで、 会社も一段とレベルアップできる はずである。
そうやって 会社を牽引できる存在になる ことを目指し、会社を 辞めず に、 自己研鑽する のが、エンジニアにとって本当に大切なことではないだろうか。